- 【2010年 08月 25日】
- 「日仏マナーのずれ」2 薮内宏 (イラスト 芦野宏)
握手 今では外国人とあいさつを交わすとき、握手をするのが一般化しました。外国人と握手をするとき、日本女性は遠慮して、相手の手をふわっと軽く握るだけにしがちです。ところがそうすれば、外国人は、日本女性が気持ち悪がっているか、自分を嫌っているからではないかと気にします。誤解されないためにも、しっかり握手する必要があります。なお、未成年の若い女性は、男性に対しても先に手を差しのべることをしません。
日本では、握手するとき、男性が先に手を差し延べるのが普通のようですが、フランスなどでは、地位か年齢が離れている場合を除けば、女性が先に手をさしのべます。しかし、初対面のときには、女性は必ずしも手を差し延べるとは限りません。会釈する方が多いでしょう。そのとき、男性も返礼として会釈するだけです。あいさつの言葉はもちろん交わします。
日本では、自己の妻子を紹介するのに、「愚妻」など、卑下した言い方をするのに対して、フランスでは「妻はドイツ語も話せますよ」のように言って、良い印象を与えるように努めます。このギャップは大きいです。
パーティでは、相互に紹介されていない者同士が接触する初対面のとき、握手をしません。笑顔を浮かべて軽く会釈し合うだけで、あいさつの言葉も簡単です。
握手はもともと相手に対して敵意がないことを表すためのしぐさでした。しかし昔は必ずしもそうではなかったようで、今でもフランス人は、握手の直後に本能的に身体が付かない程度に相手から少し離れることがあります。
フランス人は、人と出会ったときと別れるときにいちいち握手します。会社に出社したときと帰宅するときもそうします。黙って幽霊のように消えることはありません。すっといなくなるのをフランス人は、「イギリス式に帰った」とひやかして言いますが、パーティでホストとホステスがあいさつの応対でなかなか空かないときにそうするからでしょう。いずれ礼状に簡単な詫びの一言を付け加えることになります。