【2012年 07月 25日】
「日仏マナーのずれ」20 薮内宏

ナプキン
 茶席によばれたとき、つくばいで手を清めます。フランスでは、食事に時間をかけるので、特にパーティーでは、手洗いに行くことをお勧めします。パンを手で食べますので、手を清めるだけでもその方がよいでしょう。
 
 席に着いた後、フランスでは、ホステスがナプキンを手にとってから他の人達はナプキンを手に取ります。フランス料理では、ソースやバターが多用されます。従ってどうしてもくちびるがよごれます。ぶどう酒や水を飲むとき、グラスにべっとり汚れが着くのは見苦しいので、飲む前にナプキンでくちびるをふくことが必要になります。ナプキンはよごしても気にかける必要がありません。戦前のフランスでは、お湯でナプキン類を洗っていました。大分前ですが、お湯でなくても落ちる、と書いてありましたフランスの洗剤を分けて下さった方がおりました。

 ナプキンのニ端を首の後ろで結わえて、バーベキュー式に胸を覆う人もいますが、普通は小さい子供向きの方法です。ナプキンの一端をえりに差し込む金太郎の腹巻型も家庭内向きで、お勧めできません。ナプキンは二つ折りにしてひざに乗せます。折り目をお腹側に置くのが普通です。人によってはナプキンを三角形に折って、その一端をお尻に敷いて、滑り落ちないようにする人がいます。もっとも、ナプキンを落としてもあわてる必要がありません。ウエイターに合図して拾ってもらいえばよいのです。

 食事を終えて、ナプキンをきちんとたたむきちょうめんな人がいますが、家庭に呼ばれてごちそうになった場合、それはまた呼ばれたい合図になるので、ずうずうしい人と思われかねません。レストランでは、料理がまずかったことを表す不満の意味に受け取られます。ナプキンはある程度大雑把にたたむか、軽く丸めておきます。食事を終えた合図になります。

 日本では、食事前におしぼりを出してくれるのはいいですね。ちょっと行儀が悪いが、夏、おしぼりで顔も拭くことがあるでしょうが、ナプキンで顔を拭くのは遠慮すべきで、自分のハンカチを使うことになります。

 偉大な細菌学者パストールの同郷人達がパンをむき出しに抱えたり、パンを手でちぎって食べることが気にならないことから見て、フランス人は、高温多湿で細菌やかびに悩まされている日本人ほど細菌を恐れていないようです。日本では、細菌を極端に毛嫌いしている人がいますが、身体の表面にいる細菌の多くは、逆に身体を守っている、と聞いたことがあります。もっとも、レストランでの食事のとき、日本式のプラスチック製の袋に包まれているウェットティッシュが普及すればいいのに、と思います。

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