- 【2011年 12月 15日】
- 「フランスの今と昔」 6 中津海裕子
【シャンゼリゼのマルシェ・ド・ノエル】
2011年のMarché de Noël(マルシェ・ド・ノエル。クリスマス市)はアルザス地方をとりあげたが、今年はパリのコンコルド広場のすぐ脇からグラン・パレ付近まで伸びている、シャンゼリゼのマルシェをのぞいてみた。
リクヴィルとストラスブールのマルシェは、当然のことながらアルザス地方の特産物に重心がおかれていたが、シャンゼリゼの方はフランスの各地方のみならず、近隣諸国の産物もまとめて堪能できるのが特徴だ。例えば30歩ほどの内に、スペインのチュロスと、フランスはボルドーのカヌレと、ベルギーの老舗菓子屋のワッフルが競合している状態だ。ソーセージなどの豚肉製品に関しても、コルシカ、トゥールーズ、スペイン等々がしのぎを削っている。その他の小物類に至っては、もはや途中で地方や国名をカウントするのを放棄してしまいたくなるバリエーションだ。昨年と比べるとまだそこまで冷え込んではいないパリではあるが、この時期になるとどうしても飲みたくなるものがある。Vin chaud (ヴァン・ショー。ホットワイン)だ。カフェでゆったりといただくのもいいのだが、紙コップに入ったヴァン・ショーを片手にマルシェ・ド・ノエルを見て歩くのも捨て難い。マルシェを歩いていると、方々にVin chaudの文字を見る。アルコール分が90%以上とんだ後のワインを飲むのを避けたい場合の簡単な目安としては、スパイスの混じったワインのいい匂いが漂ってくるお店は避けること。完全密封型のサーバーを使っている所を選ぶと、しっかりとワインのアルコールを保ちつつ、ほんのり甘くてスパイシーな冬の味を楽しめる。逆に、アルコールがあまり得意ではないけれども試してみたい場合には、鍋からいい香りのしてくるお店を選ぼう。
見上げれば、何本もの飛行機雲が重なっている空は少し霞んだ冬の青。ラム酒を加えたヴァン・ショーで温まった体でセーヌ沿いを歩けば、ノートルダム大聖堂前の大きなツリーに光が灯る。寒いのは苦手だけれど、こうやってみると冬も悪くない。
2011年12月、パリ