- 【2011年 05月 20日】
- 「日仏マナーのずれ」10 薮内宏 (イラスト 芦野宏)
手みやげ
家庭に招待されたとき、日本とフランスではお土産を持参することに変わりはありません。公的なパーティでは手みやげ持参で出席すると却って迷惑ですが、フランス人家庭へのお呼ばれのとき、特にお返しの招待をする機会に乏しい場合、持ってゆくことが好ましい。一晩その家に泊めてもらったときのようにお手伝さんに世話になった場合には、お手伝さんにそっとチップを渡す方がよいです。日本のものを持参すると喜ばれますが、日本人と交際している人は、扇子や日本人形を持っているので、要注意です。外国では、訪問する家が庭付きで、花の咲いている時期を除いて、一番無難なのは花束です。花束を当日持参することもありますが、ときには主婦の用事を増やすことになりますので、名刺を添えて数時間前に届けさせるか、翌日に送ります。花は奇数です。花言葉の関係で、お呼ばれとか、誕生祝いなど、花屋に贈呈目的を言っておいた方がよい。
手土産は、お客が何人も来るとき、手みやげを玄関で家の人に手渡すか、名刺を添えて、玄関の小机の上にそっとおきます。
日本では、菓子類でしょうが、フランスでは、手みやげとして花かチョコレートかキャンデーを好んで持参します。キャンデー類は、きれいな容器に入れてもらうことができますが、入れ物の方が高かったりします。親しい間柄でしたらぶどう酒などのアルコール類も良いですが、その家の好みを知っている場合です。二人以上で行くときには花も同時に持参すると良いでしょう。
ホームステーのように世話になったときでは、お礼としてのゆかたか真珠はとても喜ばれます。日本人形のようにケースがかさばり、見るだけのものはそれほど喜びません。人形は抱くものです。ふろしきはテーブルセンターに、箸置きはナイフ置きに転用しています。ハンカチでは、刃物と同じく小銭を忘れずにもらうことは良く知られているでしょう。菜切り包丁にも関心を寄せられますが、飛行機に持ち込むのはむずかしい。
日本では、一日か二日の短期間の旅行でも、帰ったら、留守番の家族だけでなく、会社の同僚におみやげをあげますが、フランスではそうしません。土産話だけです。