- 【2014年 12月 03日】
- 「お気に入りのシャンソンを聴きながら お洒落にカジュアル・フレンチ」
7渡邊みき -
『お気に入りのシャンソンを聴きながら
お洒落にカジュアル・フレンチ⑦』 渡 邊 み き第7回:”La Maritza” & La cuisine française aux saveurs bulgares
『想い出のマリッツァ』& ブルガリアの香りを楽しむフレンチ「キュウリのカクテルサラダ ヨーグルト・ドレッシング」
「挽肉と野菜のミルフィーユ仕立て ムサカ風」
「ヨーグルト・グラッセ シルヴィに寄せて」前回に続き、今回も異国の香りを添えたカジュアル・フレンチのメニューをご紹介致します。
移民の国フランス、多くの芸術家や音楽家が祖国に想いを寄せた作品を残していますが、
今回のテーマ『想い出のマリッツァ (La Maritza)』を歌ったシルヴィ・ヴァルタン
Sylvie VARTAN も出身はブルガリアです。そこで、ブルガリアの伝統的な食材といえば、
ヨーグルト。その起源は紀元前5000~6000年バルカン半島や中央アジアで牧畜が始まった
頃に遡り、日本では飛鳥奈良時代に「酪」と呼ばれるヨーグルトのようなものが朝廷で珍重
されていたと言われています。現代の私たちの生活には欠かせない健康食品のひとつですが、
デザートとしてだけではなく様々な料理に応用されている例をご紹介致します。
免疫力アップ、美容と健康のためにも習慣的に摂取したい身近な食材であるヨーグルト、
家庭でも気軽にお作り頂けるフレンチのコース料理ですので、是非お試しください!キュウリのカクテルサラダ ヨーグルト・ドレッシング
ブルガリアの代表的なスープ「タラトール」は、ニンニクで香り付けをした、キュウリと
ヨーグルトの冷製スープですが、フランスにもキュウリとヨーグルトの相性の良さを生か
したオードブルがあります。私が初めて南フランスの家庭で頂いたオードブルが、この
「キュウリのカクテルサラダ」。庭の畑で収穫したヘチマのように大きく育ったキュウリ、
ピーラーで皮をヒューッと剥いてからサイコロに切り、ヨーグルト風味のドレッシングに
和えるというシンプルな一品で、キュウリの食感と爽やかなヨーグルトの酸味が絶妙に
マッチした、美味しい家庭的なオードブルです。材料【 Ingrédients 】4人分
キュウリ4 本 / 黒オリーブ8粒 / オイル漬けトマト(みじん切り)小さじ1杯分 / ミント
(飾り用)適量 / 塩 適量
《ヨーグルトのヴィネグレットソース》
EXオリーブオイル 大さじ3杯 / プレーンヨーグルト 大さじ3杯 / 粒マスタード
小さじ1杯 / 白ワインヴィネガー 小さじ1杯 / レモン汁 小さじ1杯 / フレッシュ・
ミント(みじん切り)小さじ1/2杯 / おろしニンニク 小さじ1/2杯 /
塩・こしょう 適量作り方 【Recette】
《ヨーグルトのヴィネグレットソース》
①ボールに粒マスタード、おろしニンニク、塩(小さじ1/4杯程度)、こしょうを入れて
混ぜる。マスタードは、ディジョン産の粒マスタードがお勧め。今回はピンク色のカシス・
マスタードを使用。
②①に白ワインヴィネガーとレモン汁を加え、よく混ぜてからヨーグルトを入れ、
さらに混ぜ合わせる。
③②にオリーブオイルを少しずつ加えて、とろみが出るまで混ぜる。
④③に細かく刻んだフレッシュ・ミントを加える。《キュウリのカクテルサラダ》
①ピーラーでキュウリの皮をむく。
②キュウリを1cmの角切りにして、ザルに入れ、少量の塩をまぶして約15分、
水分が出てくるのを待つ。
③②のキュウリは水で洗い流し、塩分を取り除いたら、水気をよく切る。
④キュウリをボールに入れ、ヨーグルトのヴィネグレットソースと混ぜ合わせる。
⑤器に盛り、細く刻んだオイル漬けトマトと黒オリーブ、ミントの葉で飾る。
オイル漬けトマトの代わりに、プチトマトを飾ってもよい。挽肉と野菜のミルフィーユ仕立て ムサカ風
バルカン半島諸国には、「ムサカ」という伝統的な挽肉料理があります。炒めた挽肉と野菜
の上にヨーグルトを掛けてオーブンで焼きます。フランス風にベシャメルソースとチーズを
加え、ナスとジャガイモを層にしてミルフィーユ仕立てにしました。今回は耐熱オーブン皿
から直接取り分けて頂くパーティー料理のレシピーをご紹介致しますが、レストラン風の
一人前の盛り付けとして、ジャガイモのガレットのレシピーも添付致しましたので、参考に
なさってみてください。材料【 Ingrédients 】6人分(直径約25cmの耐熱オーブン皿を使用)
ジャガイモ 小3個 / 牛豚挽肉500g / タマネギ1個 / ナス4 本 / マシュルーム8個 /
トマト水煮 1/2缶 / ニンニク1片 / 赤ワイン50cc / ミックスチーズ100g / プレーン
ヨーグルト50g / フレッシュハーブ(イタリアンパセリ、バジル、ディルなど)または、
乾燥ハーブ 適量 / オリーブオイル 適量 / 塩・こしょう 適量《ベシャメルソース》
牛乳350cc / 薄力粉60g / バター60g / 生クリーム(乳脂肪35%)50cc(お好みで)/
塩・こしょう 適量《ジャガイモのガレット(レストラン風の盛り付け用)》
ジャガイモ 小4個 / オリーブオイル 適量 / ナツメグ 適量 / 塩・こしょう 適量作り方 【Recette】
《ベシャメルソース》
①薄力粉はふるって、牛乳は温めておく。
②鍋にバターを入れ、溶けたところで薄力粉を加え、焦がさないようによく混ぜて
火を通し、なめらかになったら火からおろす。
③②に温めておいた牛乳を少し加え、手早く混ぜ、再度火に掛ける。
④③で行った作業を2、3回繰り返し、牛乳を全て加えたら、お好みで生クリームを加え、
塩・こしょうで味を調える。《ジャガイモのガレット》直径約12cmのセルクル使用
①ジャガイモの皮をむき、出来るだけ細く千切りにする。
②小さめのフライパンにたっぷりのオリーブオイルを入れ、セルクルの中に
ジャガイモを敷き詰め、円形に焼く。スプーンなどで押して隙間がないよう平らに焼く。
③片面が焼けたら、小さなナイフなどでセルクルの内側に切込みを入れ、型から外し、
裏面も同じように焼き色をつけ、ナツメグ、塩・こしょうで味付けをする。《挽肉と野菜のムサカ》
①ニンニクはみじん切りに、皮をむいたジャガイモは3mm程度のスライス、タマネギ・
マッシュルームは、それぞれ5mm程度にスライスし、ナスもヘタを取ってから縦に薄く
5mm程度にスライスしておく。
②ナスとジャガイモはオリーブオイルで軽く焼き色をつけておく。
③ニンニク・タマネギを中火で炒め、きつね色になったら挽肉を加え、火が通って
きたらマシュルーム、トマトの水煮、赤ワインを加え軽く煮込み、塩・こしょうで味を
つける。火からおろしたらみじん切りにしたハーブを加え、混ぜ合わせておく。
④耐熱オーブン皿にナスを敷き詰める。その上に③を入れ、今度はジャガイモを
敷き詰める。ナス、挽肉、ジャガイモを交互に、層になるように平らに入れていく。
⑤最後に、ベシャメルソースを掛け、その上にミックスチーズを混ぜたヨーグルトを
掛けて、200℃のオーブンで約30分焼いたら出来上がり。※レストラン風の盛り付けは、焼き上がった挽肉と野菜の具を、層を崩さないように
ナイフなどで約1人前切り出し、セルクルを使ってプレートの中央に円筒形に盛ります。
その上にガレットを乗せ、周りに焼き野菜を並べれば、簡単にお洒落なメイン料理が
出来上がります。ヨーグルト・グラッセ シルヴィに寄せて
不老長寿の果物と呼ばれるイチジク、フランスでは生ハムやフォワグラと一緒に頂くほか、
コンポートにしたり、タルトにしたりと、デザートとしても大変人気があります。紫色の
皮を剥きカットすると現れるクリーム色と薄紅色の切り口が織り成す模様は、まさに芸術
です。「フレンチポップス」のイメージに合わせて、この可愛らしいピンク色のイチジクに、
柿の橙色をアクセントに加えたヨーグルトの冷たいデザートを考案致しました。ブルガリアは
バラの国としても有名です。香水用ローズオイルの主要な生産国でもあり、食文化でも紅茶や
ジャムなど、色々なバラの加工品があります。そこで、今回のコース料理のデザートには
ローズティーを添えました。ブルガリアの香り漂うフレンチを存分にお楽しみください。材料【 Ingrédients 】6人分(パウンドケーキ型21cm 1台分)
プレーンヨーグルト 250g / 生クリーム 100cc / 卵白 1個分 / はちみつ 大さじ3杯 /
グラニュー糖 大さじ3杯 / レモン汁 1/2個分 / コアントロー 小さじ1杯 / イチジク 2個 /
柿1/4個作り方 【Recette】
①生クリームをホイップし(7分立て)冷蔵庫で冷やしておく。
②レモン汁にグラニュー糖、はちみつ、コアントローを加え、よく溶かしてからヨーグルトを
加え、泡立て器でよく混ぜ合わせる。
③卵白を固めに泡立てる。
④③の卵白に②を少しずつ加え、混ぜ合わせる。
⑤④に用意しておいたホイップクリームを加え、均一に混ぜ合わせる。
⑥型にガーゼを敷き、カットしたイチジクと柿を並べ、その上に⑤を静かに流し入れ、
丁寧に全体をガーゼで包む。
⑦冷凍庫で3時間以上冷やし固める。−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
共産主義政権から逃れて家族とともにフランスへ亡命したシルヴィ・ヴァルタン。彼女が
歌う故郷を流れるマリッツァ(マリッザ)川への郷愁の念は、《マリッザは私の川、セーヌ
があなたの川であるように…》と始まりますが、自由を求めてパリへと渡ったことは、同時
に祖国への別離でもあり、その複雑な心情がこの歌に込められていると思います。8歳で
祖国を離れたシルヴィ・ヴァルタンの想いが詰まった『想い出のマリッツァ』(作詞Pierre
Delanoë / 作曲J. Renard )の原詩を紐解いてみましょう。《幼いころの粗末なお人形ですら 私が10歳まで持っていたものは何ひとつ残っていない
残っているものといったら 昔聞いた歌のフレーズだけ ラララ… マリッザ川に暮らす
鳥たちは 私たちに自由の歌を歌った 私にはよく分からなかったが 父はそれを理解して
いた 地平線が闇に包まれると 鳥たちはみな希望を求めて飛び立った そして私たちも
鳥たちを追って パリへとやって来た 私には幼いころのものは何も残っていない けれど
目を閉じれば父のあの歌が聞こえてくる ラララ…》私たちの一生も、流れる川の水の如し。アポリネールの『ミラボー橋(Le Pont Mirabeau)』
では《流れゆくものは「セーヌ川」と「僕たちの恋」、過ぎ去った時間も昔の恋も戻ることは
ない》と、画家マリー・ローランサンとの失恋がセーヌの流れに重なります。また、鴨長明の
随筆『方丈記』の冒頭は《ゆく川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。淀みに
浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある、
人と栖(すみか)と、またかくのごとし》と始まります。川は絶えず流れ、しかも、一度流れた川
の水は決して元と同じ水ではなく、淀みに浮かぶ水の泡も、消えては現れ、長く同じ場所に
留まっていることはない、人間と住まいも、川の流れや泡と同じように絶えず移り変わって
いくもので無常であると…。フランス語で「人生の流れ」は le fleuve de la vie( le fleuve
とは、川を集めて海へ注ぐ河のこと)と表現されるように、洋の東西を問わず、また時代を
超えて、川の流れは人生の流れと重なるようです。フレンチポップス界のトップスター
シルヴィ・ヴァルタンの『想い出のマリッツァ』を
聴きながら、ブルガリアの香りを楽しむフレンチで
素敵なひとときをお過ごしください!BON APPETIT ボナペティ!
渡邊みき Miki WATANABE
フレンチ・レストラン&文化サロン「レスプリ・フランセ」経営。フランス料理研究家。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、グルノーブル・スタンダール大学に留学。音楽・料理の分野で翻訳者、通訳コーディネーターとして活動。フランス料理をダニエル・マルタン氏に師事し、2002年サロン式フレンチレストランを湘南にオープン。 2005年には南フランスの3つ星レストランMAISON PICにて企業研修の機会を得る。レストラン業務に加え、コンサート・音楽サロン・フランス語講座などを企画、湘南における日仏文化交流の場となることを目指す。幼少の頃よりクラシック音楽(ピアノ/声楽)を学び、シャンソンをパトリック・ヌジェ氏に師事。現在、レストラン経営と並行して、シャンソンやフレンチ・ポップスを原語で歌う活動をしている。
レスプリ・フランセ 神奈川県藤沢市鵠沼海岸7-7-11
Tel:0466-34-3299 Fax:0466-34-3298 E-mail:info@fr-jp.net
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