- 【2012年 08月 31日】
- 「お気に入りのシャンソンを聴きながら お洒落にカジュアル・フレンチ」3 渡邊みき
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■第3回:”Le temps des cerises” & Cuisine de l’Auvergne
『さくらんぼの実る頃』&オーベルニュ地方の料理「豚フィレ肉のロティ レンズ豆のソース」
「さくらんぼのクラフティ」今回のテーマは『さくらんぼの実る頃』。春に薄桃色の花を咲かせ目を愉しませてくれた桜は初夏に
なると可愛らしい真っ赤なさくらんぼを実らせて、食卓に太陽の香りと甘酸っぱい美味しさを届けて
くれます。パニエ(編みかご)一杯に摘まれたさくらんぼは子どもたちの大好物!もぎたての果実を
ポンポンとちっちゃな口へ運びながら庭を駆け回り、女の子たちはさくらんぼのイヤリングでおおは
しゃぎ! さくらんぼの季節になると「鳥たちが陽気に歌い、乙女たちが恋をし、恋人たちは心に
太陽を抱く」と歌われていますが、まさにあの艶やかな紅色の小さな果実には大地のパワーが凝縮され
ていて、人々に活力と幸福をもたらしてくれるのでしょう。今回は、さくらんぼの産地であるフランス中央山岳地オーベルニュ地方の家庭料理「さくらんぼのクラ
フティ」と、オーベルニュのル・ピュイ特産のレンズ豆を使った料理「豚フィレ肉のロティ レンズ豆の
ソース」をご紹介致します。私たち日本人にとって「さくらんぼ」というと、季節限定の高級フルーツ
といったイメージがありますが、フランスでは家の庭で収穫出来る身近な果実のひとつです。
一度にたくさん穫れるものですから、コンフィチュール(ジャム)や洋酒漬けにして保存し、お菓子
作りに使ったり、朝食には焼きたてのバゲットにたっぷり塗って頂いたり、一年中あの優しい甘酢っぱ
さを愉しむことができます。私たちが庭で穫れた「梅」を梅酒や梅干にして保存するのと似ていますね。
「さくらんぼのクラフティ」は簡単に出来るデザートで、冷凍もしくはシロップ漬けのグリオットチェ
リーを使ったり、また旬の季節でしたらアメリカンチェリーで代用することも出来ます。そしてメイン
料理「豚フィレ肉のロティ レンズ豆のソース」、レンズ豆は水に戻す必要がなく、そのままボイル
してスープやサラダなどアイディア次第で様々に応用できる《簡単・美味しい・ヘルシー》三拍子揃っ
た食材で、鉄分や食物繊維が豊富に含まれています。目先の変わったお豆料理、ホームパーティーなど
では話題性があり、また見栄えのする一品ですので、是非一度お試しください!さて再び『さくらんぼの実る頃』に戻りますが、この歌の背景には1871年のパリコミューンの崩壊が
あり、痛ましい流血の歴史をパリ市民がこの歌に重ね、広く歌われるようになったとのことですが、
1番の歌詞で「喜び・愛」をイメージさせる幸せの象徴だった「さくらんぼ」は、2番では「恋のはか
なさ」に変わり、愛のさくらんぼは実りの季節が短く、まるで血の雫のように葉陰に落ちてしまい・・・
3番以降では、この季節になると昔の恋の痛みを思い出し、その傷は永遠に消えることなく苦しめられ
る・・・けれども、この季節をこれからもずっと愛し続けるのだという内容、この珊瑚色の小さな果実
「さくらんぼ」には、人生の「甘味」と「酸味」の両方がギュッと詰まっているのかも知れませんね。【 材料 Ingrédients 】4人分
〈豚のロースト〉
豚フィレ肉600g / ニンニク1片(みじん切り)/オリーブオイル 適量 /
はちみつ 大さじ1 / 塩・コショー適量〈レンズ豆のソース〉
レンズ豆100g / 玉ねぎ1/4個(みじん切り)/ ニンニク1片(みじん切り)/
白ワインorベルモット酒(ノイリーetc.)100cc / 生クリーム50cc /
白ワインビネガー20cc /パセリ(みじん切り)適量 / 塩・コショー適量〈ガルニチュール(付け合せ)〉
おくら・なすetc. / 飾り用のハーブ / EXバージン・オリーブオイル 適量【 作り方 Recette 】
①豚肉に塩・コショーし、ニンニクのみじん切りとはちみつをまぶして、冷蔵庫で2~3時間味をなじませる。
②レンズ豆を洗い、水気を切り、沸騰したお湯に塩をひとつまみ入れてボイルする。
③フライパンで表面に焼き色をつけた豚肉をオーブンに入れ、200℃で約20分焼き上げる。
焼きあがったらアルミホイルで覆い、肉が柔らかく仕上がるように保温する。
④ニンニクと玉ねぎのみじん切りをオリーブオイルで炒め、白ワインまたはベルモット酒、白ワイン
ビネガーを加え、中火で半分の量になるまで煮詰める。
⑤④に生クリームとボイルしたレンズ豆を加え、ひと煮立ちさせ、塩・コショーで味を調え、
パセリのみじん切りを加える。
⑥豚肉をカットし、付け合せの野菜をオリーブオイルで炒めて塩・コショーし、⑤のソースを掛けて
ハーブを飾って出来上がり!【 材料 Ingrédients 】φ20㎝のオーブン皿 1台分
〈さくらんぼのカラメリゼ〉
さくらんぼ300g / バター60g / グラニュー糖大さじ2 /
キルシュ(さくらんぼの洋酒)適量〈アパレイユ(卵液)〉
全卵3個 / グラニュー糖100g / 薄力粉80g / 牛乳400cc / 生クリーム100cc【 作り方 Recette 】
①さくらんぼにバターとグラニュー糖を加えて、カラメルになるまで火にかけ、香ばしい香りが
してきたらキルシュを加える。
②グラタン皿にバターを塗り、①のカラメリゼしたさくらんぼを並べる。
③全卵・グラニュー糖・ふるった薄力粉をボールに入れて混ぜ、そこに温めた牛乳、生クリームを
加え、アパレイユを作る。
④③で作ったアパレイユを漉して生地をなめらかにする。
⑤④を②のさくらんぼが入ったグラタン皿に流し入れる。
⑥湯せんにしてオーブンで約30分(180℃)焼く。甘酸っぱい昔の恋の歌『さくらんぼの実る頃』を聴きながら、
オーベルニュの家庭料理で・・・素敵なひとときをお過ごしください!
BON APPETIT ボナペティ!渡邊みき Miki WATANABE
フレンチ・レストラン&文化サロン「レスプリ・フランセ」経営。慶應義塾大学卒業後、フランス・グルノーブル大学に留学。フランスの生活文化に興味を持ち、料理や音楽の分野で翻訳を手掛ける。料理をダニエル・マルタン氏に師事。2002年サロン式フレンチレストランを湘南鵠沼にオープン。 2005年には南フランス・ヴァランスの3つ星レストランMAISON PIC(メゾン・ピック)にて企業研修の機会を得る。レストラン経営と平行して「文化講座」「ライブコンサート」などを企画運営、湘南における「料理と音楽」の文化交流の場となることを目指す。フランス語クラスを主宰する傍ら、通訳コーディネーターとしても活動。幼少の頃から音楽を学び、シャンソンをパトリック・ヌジェ氏に師事、原語でシャンソン・フレンチポップスを歌う活動をしている。
レスプリ・フランセ 神奈川県藤沢市鵠沼海岸7-7-11
Tel:0466-34-3299 Fax:0466-34-3298 E-mail:info@fr-jp.net
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