- 【2010年 12月 20日】
- 「フランスの今と昔」2 中津海裕子
【マルシェ・ド・ノエル】
12月のフランスは、各地でMarché de Noël(マルシェ・ド・ノエル。クリスマス市)が開かれる。その中でも圧巻なのは、ドイツの影響を強く残しているアルザス地方。週末を利用して、「フランスの最も美しい村」のひとつに挙げられているリクヴィルと、アルザスの中心地ストラスブールのマルシェを巡ってみた。まずはリクヴィルへ。ストラスブールから電車で30分程のコルマールへ行き、そこからさらにバスで広大なブドウ畑をぬけて到着。ワイン街道の中でもおそらく最も有名な、とても可愛らしい村だ。メインストリートも、パリの大通りなどと比べるとこぢんまりしたもので、おそらく村の人口の3倍以上いると思われる観光客にまぎれて歩いても、あっという間にマルシェの端から端まで見てしまえる。この地方のマルシェではお馴染みのプレッツェルやVin Chaud(ヴァン・ショー。ホットワイン)の白を片手に、クリスマス用品や雑貨がところ狭しと並べられた露店を、ゆったりとのぞいてまわるのがおすすめだ。また、もともと白ワインの産地として有名な地方なだけあり、かなりの数のワイナリーや酒屋が見受けられる。リースリング、ミュスカ・・・等など、陽気なムッシュー達の勧めに従って味見をしつつ、普段より少しお得になっているワインの中から、数本選んでみた。
戦利品を片手にリクヴィルを後にし、再びバスと電車を乗り継いでストラスブールに着いたときには、すっかり日が落ちて、町の至る所がイルミネーションで彩られていた。通りによってテーマが設定されているようで、青ベース、赤、黄、緑など、少し歩くだけで道の雰囲気ががらりと変わる。なお、バカラクリスタルを利用したイルミネーションで飾られた通りも。
マルシェは、ストラスブール中心部の観光名所のそばにいくつか見受けられたが、やはり圧巻なのは大聖堂前。町の移り変わりを見続けてきた壮麗なゴシック建築の足元に、光が灯り、湯気が上がり、人々が行き交う。気温はギリギリ0℃を超えるか否かだが、その一角にはエネルギーが満ち、寒さを感じさせない。ここでもやはり、ホットワインかスパイス入りの温かいリンゴジュースを片手に、色とりどりのツリーの飾りや工芸品、クリスマス用のデコレーションを施されたPain d’épices(パン・デピス。蜂蜜と数種のスパイスが入ったケーキ。フランスのクリスマスディナーでは、フォアグラと一緒に食べられることも多い。)などを眺めてまわる。普段は地味な焦げ茶の塊のパン・デピスが、もみの木や天使、ブタの形に切り取られてカラフルになったら、1年もほぼ終わりなのだ。2010年12月、ストラスブール